裏の畑のおばあちゃんが死んだ。
老衰だったらしい。聞けば90歳近かったそうで、私が此処に住み始めて十年ちょっと、野菜を下さったりとてもよくしていただいた。そんな彼女ともう二度と口を聞けないと思うと、心のどこかに小さな穴がぽっかり空いたような心地だ。
死というものを私はよく理解していない。ただその人と二度と言葉を交わせない思い出を作れない、それは遠くに住んでいて会えないのと違って、妙な虚脱感に襲われる。
高齢者の死はある日突然やってくる。祖父が死んだ時、私は高熱を出して念仏を聞きながら寝ていた。骨も拾えなかった。祖父の病気は長く突然というわけではなかったけれど、小学生だった私は毎日がきらきらしていて、その別れは確かに唐突だったのだ。
今もどこかで誰かが何人も死んでいる。いつもひとごとだったけれど、それは同時にどこかで誰かが何人も心の中の何かを失っていることを意味するのだ。
そして、私も。
PR